正直に告白します。「仕組み化」という言葉を聞くと、僕らのような企画職は少し身構えてしまいます。
「マニュアル人間を作る気か?」「クリエイティブな発想は、非効率な無駄から生まれるんだ」
そんな風に、どこかで**「仕組み=自由の剥奪」**という偏見を持っていたからです。僕たちはいつだって、カオスの中からキラリと光るインサイトを見つけることに快感を覚える生き物ですから。
でも、最近ふと思うんです。
日々の業務で「承認フローのための資料作成」や「情報共有の不備による手戻り」に時間を奪われ、肝心の「思考する時間」が削られている現状こそ、クリエイティビティの敵なんじゃないか、と。
そんなモヤモヤを抱えていた時に手に取ったのが、今回紹介する一冊です。
結論から言うと、この本は**「管理するためのマニュアル本」ではなく、「社員全員を『経営者』にするための思考のOS」**について書かれていました。
今回、思考の「よりみち」をくれた本
今回は、あの巨大企業「ユニクロ(ファーストリテイリング)」が、なぜこれほどまでに強く、そして速いのか。その裏側にある「徹底的な思想」を解き明かした一冊です。
『ユニクロの仕組み化 UNIQLO WISDOM』
著者 宇佐美 潤祐 出版社 SBクリエイティブ ジャンル 経営 / 組織論 [Amazonで見る] [楽天ブックスで見る]
著者の宇佐美氏は、アクセンチュア等のコンサルを経てファーストリテイリングに入社し、柳井正社長の元で「Global One」構想を推進した人物。つまり、ユニクロの「脳みそ」の一部を構築した方です。
「仕組み」とは、誰かを縛る鎖ではなく、自由にするための土台だ
僕はこの本を読んで、ユニクロに対する解像度がガラリと変わりました。
「安い服を大量に売る会社」ではなく、**「世界一、個人の自律を求めている会社」**なのだと。
プランナー視点で、特に刺さった3つのポイントを深掘りします。
1. 「全員経営」という名の、究極の情報公開
広告業界でもよく「視座を高く持て」と言われますよね。でも、平社員に経営者と同じ判断をしろと言われても、そもそも**「見ているデータ」が違えば判断できるわけがありません。**
本書で語られるユニクロの強さは、ここにあります。
- 情報は隠さない: 売上データ、顧客の声、経営課題。これらを一部の幹部だけでなく、パート・アルバイト含めた全員がアクセスできるようにする。
- 判断基準の統一: 「柳井さんならどう考えるか?」ではなく、「ユニクロの理念(真・善・美)に照らしてどうあるべきか?」という共通言語を持つ。
「仕組み」とは、凡人が非凡な結果を出すための工夫である。
この視点は強烈でした。僕たちはよく「属人化」こそがプランナーの価値だと勘違いしがちです。でも、ルーティンや判断基準を「仕組み化」して、脳のメモリを空けない限り、本当にクリエイティブな「B領域(重要だけど緊急じゃない仕事)」には取り組めないのです。
2. 「失敗」を評価するシステム
「イノベーションを起こせ」と口では言うけれど、失敗したら減点される組織。これ、あるあるですよね。
ユニクロの評価制度の面白さは、「何もしないこと」が最大のリスクだと定義している点です。
- 加点主義: 挑戦した結果の失敗は咎めない。
- 減点対象: リスクを恐れて現状維持を選ぶこと。
本書には、個人の成長を促すための具体的な評価シートや「グレード」の考え方も紹介されていますが、根本にあるのは**「商売人であれ」**というマインドセットです。
僕らもクライアントワークの中で、「前例がないから」という理由で提案を丸めてしまうことがないでしょうか? この本は、そんな「事なかれ主義」の背中をバシッと叩いてくれます。
3. 「即断・即決・即実行」の本当の意味
ユニクロといえば、PDCAを高速で回すことでも有名です。
本書の中で紹介されている**「重要度と緊急度のマトリクス」**の話が、個人的に一番の収穫でした。
- A: 重要かつ緊急(クレーム対応など)
- B: 重要だが緊急ではない(人材育成、長期戦略、仕組みづくり)
- C: 緊急だが重要ではない(無意味な会議、付き合いのメール)
- D: 緊急でも重要でもない(時間の浪費)
多くの人は、AとCに忙殺されています。僕もそうです。
しかし、ユニクロが目指す「仕組み化」とは、AやCを極限まで効率化・自動化し、浮いた時間を「B」にフルベットすることを指します。
「忙しい」を言い訳にしているうちは、二流のプランナーなのかもしれません。
未来を作る仕事(B領域)をするために、現在をハックする(A・Cを仕組み化する)。この優先順位の付け方は、明日からのTo Doリスト作成にすぐ使えます。
思考の「よりみち」を終えて
読み終えて感じたのは、ユニクロという企業の**「人間に対する信頼」**です。
マニュアルでガチガチに固めるのは、社員を信用していないからではありません。
むしろ、**「雑務で消耗させず、本来のポテンシャルを発揮させるため」**に仕組みがある。
- 仕組みがないと、人は迷う。
- 迷っている時間は、何も生み出していない。
- 迷いを消すために、基準(仕組み)を作る。
このロジックは、広告運用のレポート作りや、定例会議の進行など、僕たちの現場にも転用できるヒントの宝庫でした。
「クリエイティブでありたい」と願う人こそ、まずは足元の「仕組み化」から始めてみる。
逆説的ですが、それが一番の近道なのかもしれません。
こんな人におすすめ
- 「忙しい」が口癖になってしまっているマーケター
- チームマネジメントに悩むリーダー層
- ユニクロをただの「アパレル企業」だと思っている人
今回取り上げた本
「仕組み」へのアレルギーが、「武器」への期待に変わる一冊でした。
『ユニクロの仕組み化 UNIQLO WISDOM』
著者 宇佐美 潤祐 出版社 SBクリエイティブ [Amazonで見る] [楽天ブックスで見る]

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