『愛されるブランドのパッケージデザイン』書評-プランナーが分析する、ブランドの物語を純度で語る方法

なぜ、僕らは「ジャケ買い」してしまうのか?——思考と感性を揺さぶる“器”としてのデザイン

どうも、広告代理店でストラテジックプランナーをしている佐藤(32歳)です。僕のブログ「よりみちブック」へようこそ。

僕の仕事は、日々「ブランド戦略」や「消費者インサイト」といった、どちらかというとロジカルな言葉と格闘することです。どうすればブランドの価値を“正しく”伝えられるか。どうすれば人の心を“動かせる”か。ロジックを積み上げ、戦略を構築する。それが僕らの仕事です。

でも、ふと店頭に立ったとき。あるいはECサイトを眺めているとき。
僕らを一瞬で虜にし、理屈を超えて「これが欲しい」と思わせる「何か」があります。いわゆる「ジャケ買い」です。

この「一瞬で心を掴む力」とは、一体何なのか。
それは、僕らが日夜ロジックで構築しようとしている「ブランド」そのものじゃないのか。

そんなモヤモヤというか、職業病的な問いに、鮮やかなヒントをくれたのが、今回手に取った一冊。これは単なる美しいデザイン事例集じゃない。トップデザイナーたちの「思考」を覗き見るための、プランナーの僕にとっても、いわば“戦略書”でした。

今回、思考の「よりみち」をくれた本

数々の美しい「答え=デザイン」を眺めながら、僕が特に惹きつけられ、思考を巡らせたのはなぜか。今日はその「気づき」を書き留めておきたいと思います。

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書籍タイトル:『愛されるブランドのパッケージデザイン:辣腕クリエイティブディレクター、アートディレクターの思考と表現から学ぶ(DESIGNER’SCOLLECTION)』

著者名(編集):デザインノート編集部

出版社:誠文堂新光社

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「研ぎ澄ます」か、「編み直す」か。ブランドの“らしさ”を語る2つのアプローチ

この本には、錚々たるデザイナーたちが手がけた、まさに「愛されるブランド」の事例が詰まっています。ページをめくるたびに、その圧倒的な「正解」の数々に打ちのめされるようです。

職業柄、どうしても「なぜ、このデザインなのか?」とその背景にある戦略(ロジック)を想像してしまう。

僕が特に目を奪われたいくつかの事例——例えば、『AYURA(アユーラ)』『CACTI(カクティ)』『イチからはじめるイチノクラ』といったモダンで洗練されたもの。そして、『錦鯉(にしきごい)』『大和屋守口総本家』『中川政七商店』といった伝統や物語性を感じるもの。

これらを眺めているうちに、あることに気づきました。
一見バラバラに見えるこれらの「愛されるデザイン」は、大きく2つのアプローチに分類できるんじゃないか、ということです。

それは「“らしさ”を研ぎ澄ます」アプローチと、「“らしさ”を編み直す」アプローチです。

1.「研ぎ澄ます」力——“何をしないか”がブランドを語る

まず、僕が強く惹かれたのは、極限まで要素を削ぎ落とし、ブランドの世界観だけを静かに、しかし強力に提示するデザイン群です。

例えば、岡本佳氏が手がけた『AYURA(アユーラ)』のパッケージ。
あの独特なフォルムと、吸い込まれそうなグラデーションは、まさに「AYURA」というブランドが持つ「癒し」や「生命力」といった情緒的な価値を、言葉以上に雄弁に語っています。

同じく、小玉文氏の『CACTI(カクティ)』や、荒川敬氏の『イチからはじめるイチノクラ』も同様です。
これらは、プランナー的に言えば「ブランドパーソナリティ」や「ブランドプロミス」といった概念を、そのまま物質化したような存在。

ここで重要なのは、「何を“しない”か」という選択です。

*過剰なスペック訴求をしない。
*流行のあしらいを加えない。
*競合のトーンに合わせない。

「あれもこれも」と情報を詰め込むのではなく、ブランドの核(コア)となる価値一点に絞り、それを研ぎ澄ます。その「引き算の覚悟」が、圧倒的な世界観を生み出し、消費者の感性に直接触れるのだと思います。

これは、僕らプランナーが戦略を立てる際、「結局、このブランドが提供する“究極の価値”は何か?」という問いに、たった一言で答えようとする姿勢と全く同じ。その「答え」が、そのままパッケージになっているのです。

2.「編み直す」力——“何を背負うか”が物語を紡ぐ

一方で、全く逆のアプローチに見えながら、本質は同じだと感じたのが、歴史や伝統を背負ったブランドのデザインです。

僕が特に唸ったのは、平井秀和氏の『大和屋守口総本家(やまとやもりぐちそうほんけ)』や、居山浩二氏が手がけた『中川政七商店』の仕事。

『大和屋守口総本家』の、あの「守口大根」のイラストと堂々としたロゴ。これは「研ぎ澄ます」デザインとは対極的に、多くの情報を背負っています。歴史、製法、土地、職人の誇り。それらすべてを「編集」し、現代の消費者に「老舗の信頼感」と「本物感」として一瞬で伝えています。

『中川政七商店』のデザインもそう。「日本の工芸を元気にする!」というビジョン(=ロジック)が、商品パッケージや店舗デザイン(=エモーション)にまで一貫して染み渡っています。

こちらのアプローチは、「何を“背負う”か」という覚悟です。

*ブランドが受け継いできた有形無形の資産(歴史、技術、物語)を、一度すべて棚卸しする。
*そして、それを現代の文脈で「編み直す」。
*決して古臭く見せるのではなく、「今、価値あるもの」として再定義(リブランディング)する。

小玉文氏が手がけた『錦鯉(にしきごい)』のパッケージも、この系譜でしょう。あのアイコニックな錦鯉の姿は、「日本酒」という伝統的なカテゴリの中で、強烈な「物語性」と「ハレの日」の感覚を呼び起こします。

これらは、ブランドが持つ「ストーリー」という資産を、パッケージという“器”を使って最大化している、見事な事例だと感じました。

まとめ:パッケージは、ブランドが語るべき「物語」の純度である

今回、この『愛されるブランドのパッケージデザイン』を読み解き(正確には、眺めながら思考を巡らせ)、改めて「デザインの力」を痛感しました。

僕が惹かれたデザインは、一見すると「ミニマル(引き算)」と「トラディショナル(足し算)」で全く異なるように見えます。

ですが、本質は同じです。

愛されるパッケージとは、ブランドが語るべき「物語」の純度を、極限まで高めた“器”である。

そして、その純度は、以下のどちらかの作業によって生まれます。

1.研ぎ澄ます:ブランドの核となる価値(シグネチャー)以外のすべてを削ぎ落とし、純度を高める。(例:AYURA,CACTI)
2.編み直す:ブランドが持つ歴史や資産(ストーリー)を現代の文脈で編集し、純度を高める。(例:中川政七商店,大和屋守口総本家)

どちらも、そのブランドが「何者であるか(アイデンティティ)」が明確でなければ成し得ません。

僕らプランナーは、その「何者であるか」を“言葉(ロジック)”で定義する。そして、デザイナーはそれを“形(エモーション)”にする。

この本に載っているのは、その「ロジックとエモーションの完璧な合致」の瞬間です。だからこそ、理屈抜きで「愛される」ブランドになる。

僕も、こんなにも純度の高い「物語」を語れるブランド戦略を、まずは“言葉”で紡ぎ出せるプランナーにならなければ。そんな想いを強くさせられる、刺激的な「よりみち」でした。

もう一度、今回紹介した本

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書籍タイトル:『愛されるブランドのパッケージデザイン:辣腕クリエイティブディレクター、アートディレクターの思考と表現から学ぶ(DESIGNER’SCOLLECTION)』

著者名(編集):デザインノート編集部

出版社:誠文堂新光社

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